黒人女性射殺の警官 死亡責任問われず

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ケンタッキー州ルイビルで黒人女性のブレオナ・テイラーさん(当時26)が警官に射殺された事件で、23日、元警官のブレット・ハンキソン容疑者を無謀な危険行為の罪で起訴した。

 

しかしながら事件にかかわった警察官が殺人罪に問われなかったことで抗議デモが再燃。

一部で警官隊とデモ隊の衝突が起きている。

 

現場で発砲した3人の警官のうち、残る2人は不起訴。

つまり、3警官ともテイラーさんを殺害した罪には問われなかった。

 

この事件では警察が3月13日、麻薬捜査の目的で深夜にドアを破ってテイラーさんの自宅に踏み込み、一緒にいたテイラーさんのボーイフレンドに発砲されたことを受けて銃を撃ち返し、テイラーさんを射殺した。

 

州司法長官によると、ハンキソン被告はドアや窓越しにやみくもに発砲したとされ、銃弾はドアや窓を突き抜けて集合住宅の隣家にまで達していた。隣家には当時、妊婦と男性1人、子ども1人がいた。

 

一方、事件にかかわったジョン・マッティングリー警察官とマイルズ・コスグローブ警察官は不起訴となった。この判断についてケンタッキー州のダニエル・キャメロン司法長官は23日、テイラーさんのボーイフレンドの方が先に警官に向けて発砲したことを理由に、「正当な武器の行使だった」との見解を示した。米連邦捜査局FBI)の弾道分析によると、テイラーさんを死亡させたのはコスグローブ警察官が撃った銃弾だった。

 

ケンタッキー州のダニエル・キャメロン司法長官は、「私は黒人として、これがどれほど苦痛かを認識している。だからこそ、できる限りの手を尽くしてあらゆる事実を掘り起こすことが非常に重要だった」と語った。

 

さらに、「この事件に関する事実や証拠は、全米の他の事件とは異なる」と強調。記者会見を開く前に、テイラーさんの母親と話をしたことも明らかにした。

 

一方、テイラーさん側のベン・クランプ弁護士は、今回の決定を「言語道断」と非難、「もしハンキンソン被告の行動が隣家の住人に対する無謀な危険行為に該当するのなら、ブレオナさんに対する無謀な危険行為ともみなされるべきだ。実際のところ、無謀殺人と判断されるべきだった」と話している。

無謀な危険行為の罪は、重罪の中では最も罪が軽く、法定刑は禁錮1年~5年。ハンキソン被告に対しては1万5000ドル(約160万円)の保釈金が設定された。

 

ルイビルの中心部では抗議運動やデモ行進が行われている。23日午後のニュースには、警官隊とデモ隊が衝突する映像や、警察が数人を取り押さえる映像が流れている。

ルイビルでは何カ月も前から事件に対する抗議デモが続き、関与した警官全員の逮捕を求める声が上がっていた。

 

ルイビル市と警察は、デモの再燃を見越して非常事態を宣言し、午後9時から72時間の外出禁止を発表した。市内にはバリケードを設けて市中心部への車両の乗り入れを制限。商店や飲食店は窓に板を張り、連邦政府機関の建物は今週いっぱい閉鎖となった。デモ隊は発表の数時間前から集結し始めていた。

 

キャメロン司法長官は5月にこの事件に関する特別検察官に任命され、FBIも捜査に乗り出している。大陪審の決定が発表された後、FBIルイビル支部は声明を発表し、事件捜査を継続すると表明した。

 

ハンキンソン被告はテイラーさんの自宅に向けて無謀な発砲を行ったとして、6月に免職処分となっていた。